コミケの同人誌、二次創作と元ネタの著作権は関係ある?グレーゾーンって本当?

コミケなどの同人誌即売会で頒布される数多くの二次創作物。

「頒布」だから大丈夫ととらえるのは間違いです。

日本のサブカルチャーとして世界中に知られているコミケ。

本来ならばNGの一線も存在していることを肝に銘じる必要があります。

なかには、「二次創作物ってそもそもなんだろう」という方も少なくありません。

これからコミケで大好きな推しキャラクターの二次創作物の頒布を検討している人や、同人グッズを頒布しようと検討している人にはぜひ知っておいてほしい「二次創作と著作権」について解説します。

あなたの二次創作物で原作者の権利を侵害することや、ファンの気持ちを傷つけてしまう可能性もあります。

マナーなども踏まえて勉強していきましょう。

二次創作とは

二次創作(にじそうさく)とは、広義で原作漫画やゲームなどを元として作られた作品を指しています。

キャラクターのデザインや、原作の世界観はそのままにストーリー展開されたものや、イラストを作成したものなどが二次創作に当たります。

こちらは、同人用語として定着しているものであり、法律用語などではありません。

一次創作とは

二次創作に相対して、一次創作という同人用語もあります。

こちらは作家の完全オリジナル作品を意味しており、ストーリーの世界観やキャラクターデザイン、物語の展開などはすべて作家のアイディアで繰り広げられるものです。

単純に「創作」などといわれることも。

二次的著作物とは

二次創作と混同される言葉に「二次的著作物(にじてきちょさくぶつ)」というものがあります。

こちらは著作権法に分類される法律用語です。

この二次的著作物とは、元ネタである原作をモチーフとした完全オリジナル作品となります。

主人公のキャラデザインをトレースするものではなく、描き手の作風を取り入れて「描き手が表現する原作キャラクター」として登場させるほか、原作の世界観はそのままながらアナザーストーリーなどを提供することが二次的著作物となります。

一般的に、同人誌で発表される二次創作物のほとんどが「二次的著作物」に当たるとされています。

パロディやオマージュって?

同人作品の中には「〇〇作品のパロディ」や「オマージュ作品です」という紹介も存在しています。

パロディは原作のキャラクターデザインをデフォルメすることや、世界観に一歩踏み込み風刺表現やギャグストーリーを展開させるものを指しています。

一方、オマージュは自分が尊敬する作家の作風をまねた創作物などがこれに当たります。

オマージュと二次創作は線引きが難しく、中にはオマージュ作品が模倣に当たるとして係争に至ることもあります。

どんなに「オマージュ作品だ」「パロディだ」と主張しても、認められない作品も存在するので注意が必要です。

二次創作が著作権侵害に当たる理由

厳密にいうと、二次創作作品は著作権侵害に当たります。

どんなにオマージュやパロディといった主張をしても、提訴されてしまえば同人サークルや二次創作作家側に勝ち目はありません。

では、どういった点が著作権侵害に当たるのでしょうか。

原作の改変

いわゆる元ネタである原作をモチーフにまるっきり異なる作品を作ることがこれに当たります。

アニメやマンガという2次元作品を、フィギュアなどの3次元作品へ変化させることなどもこれに当たります。

「同一性保持権(どういつせいほじけん・著作権法第20条)」や「翻案権(ほんあんけん・著作権法第27条)」で原作者の権利が守られています。

トレース行為や模写行為

お気に入りのキャラクターをお手本にイラストを描くこと(模写)や、トレース(複製や複写)することは「複製権(ふくせいけん・著作権法第21条)」の侵害に当たります。

ただし、構図やパースの練習のために複製した、というような個人的な理由があれば著作権法の侵害には当たりません。

その複製・模写した作品を、第三者に譲渡や販売をした時点で権利の侵害が成立しますので注意しましょう。

著者・作品を明示しない

二次創作物には、いわゆる元ネタの原作者のペンネームや原作タイトルが明示されています。

これは、原作者の氏名表示権を尊重し、二次創作物であることをアピールする理由があります。

同人誌のマナーとして、最低限原作者の氏名と、元ネタとなる作品名などを掲載することが浸透しています。

自分のペンネームのみの明示にとどめ、自分自身のオリジナル作品のように見せかけてしまうことも、著作権の侵害に当たりますのでご注意ください。

著作者の了解を得ていない二次創作物

著作権侵害に当たらない例として、「著作者の了解や許諾を得ている」というケースがあります。

著作者にコンタクトを取り、二次創作物の作成や頒布をしてもよいかという確認を取る作業が必要になりますが、現状では、世の中に出回っている二次創作物の多くが、「許諾を得ていない」いわゆる著作権侵害の作品になるといわれています。

同人作品は数多あるのに、著者(原作者)は一人だけという現実があります。

そのすべてが許諾を求めてきたら対応しきれませんし、そもそもすべての同人作品と向き合い、許諾を出してしまえば、原作者が商用の作家活動を続けられなくなる可能性も出てきます。

また、同人作品の一部は成人向けにアレンジされた作品です。

健全性が失われている作品に許諾を求める行為は、モラル上考えにくいのではないでしょうか。

著作権者や版元には利益は出ない事実

コミケなど大きな同人誌即売会ではたくさんの同人誌作品の頒布があります。

来場者の中には同人作家さんのファンという人もいれば、原作のファンだという人もおり、購入目的もそれぞれです。

著作権を持つ作家は商業誌に連載を行いその利益を得て生活をしていますが、二次創作作品に関しては、原作の著作権者であるにも関わらず利益などが一銭も入らないといった事実も。

もし、二次創作作品のほうが独り歩きをしてしまったら、元ネタの原作者(著作権者)の著作権以外のところでの権利が脅かされてしまう可能性もあります。

そのため、二次創作の同人誌は「頒布」という言葉を用い、利益があまり出ないように、原価に近い価格で販売する同人作家も見られますが、それでも本来の著作権者には一切の利益反映はありません。

原作ファンとの間で軋轢が起こることも

二次創作は、原作のアナザーストーリーを楽しめます。

また、原作では想像もできないような設定や表現などが多いことから、原作ファンだけではなく同人作家に対するファンが付くこともあります。

推しキャラのイラストやストーリーなどが手に入るという手軽さはありますが、実際に推しキャラを生み出した原作者(著作権者)の利益にはなりません。

純粋に原作者を応援するファンと、同人作家が生み出すアナザーストーリーも応援するファンとの間で論争に発展することもあります。

同人活動やその作品を否定し原作を支持する側と、キャラクターのファンだから二次創作のストーリーも受け入れたいとする側との間で起こる論争は、決着がつきにくいことも多く、根強い問題となっていることもあります。

「著作権侵害は親告罪」という言葉の意味

よく、「著作権侵害は親告罪だから」といわれることがあります。

親告罪とは、直接の被害を被っている被害者からの告訴ありきの犯罪となります。

二次創作を行っている側からみると、被害者である著作権所有者本人が被害を訴え出ない限りは、起訴されることはありません。

こういった理由から、二次創作は「訴えられる可能性が高まるから、作者に許諾を取らないほうが良い」などと考えることもできますが、法律的には十分罪に問える行為ですのでご注意ください。

二次創作がグレーといわれる理由

ここでは何度か触れていますが、二次創作は法律的にアウト(ブラック)の部類に入ります。

著作権侵害に関しては著作権者が立ち上がらないと罪に問えませんし、起訴することもできません。

第三者がいくら「著作権を侵害している、悪意がある作品だ」などと指摘しても、元ネタの作者(原作者などの著作権者)がそれを指摘し、被害を訴えなければ罪が成立しないのです。

だから、二次創作はグレーと言われます。

ただし、同人誌愛好者の間では「著作権がある作家さんに、同人誌が作られている事実は教えてはいけない」という暗黙のルールも存在しています。

世界観を見出した元ネタの作家さんも大事ですが、オリジナルキャラクターにはない意外な一面を表現してくれる、同人作家さんも大事だからです。

もちろん、一次創作(完全オリジナル作品)の頒布はグレーゾーンに当たりません。

コミケなどで作品ジャンルが混在してしまうところもグレーといわれるゆえんかもしれません。

なぜ二次創作が成立しているのか

コミケやオンリーイベントなど数多くの同人誌即売会が開催され、もはや世界的なサブカルイベントとして注目されています。

法律的にアウトと言われているのに、なぜマスコミなどにも取り上げられるイベントとして二次創作が成立しているのでしょうか。

考えられることをいくつかまとめました。

提訴すると費用が掛かる

著作権者は一人なのに、そのタイトルの二次創作を行う同人作家は数えられないほどいます。

著作権を脅かすすべての同人作家を訴えるためには莫大な費用が掛かります。

もちろん、訴えた同人作家の中には「著作権侵害に当たらない」と司法判断される可能性もあり、こういった際の費用は訴えた著作権者が負担することになります。

要するに、泣き寝入り要素も含まれているため、黙認せざるを得ないというような場合があります。

元ネタの著作権者によっては、自分の作品における「二次創作についての見解」を公表していることもあります。

作家をリスペクトしたうえで二次創作を行っているのであれば、こういった公式の情報なども確認しておくとよいでしょう。

著作者が二次創作を認めている

先ほど触れた「二次創作についての見解」について、著作権を保有する作家が「二次創作に関してはOK」と、自分の作品を使うことを許可していることもあるようです。

中には、もともと同人作家の経歴を持つ人もいますし、商用作家も一次創作や自分の作品の二次創作作品を製本しコミケ出展を行っていることもあるようです。

二次創作のマーケット事情などを熟知しているからこそ、認めていることもあります。

また、すべての同人作品に対し許諾の有無を熟慮していたら、著作者本人の創作活動が滞ってしまうこともあるので、一律に許可しているというケースもみられるようです。

ただし、中には条件付きで認めていることもあるので、著作権者の主張も確認する必要があります。

二次創作界からの人材発掘

二次創作を主に行ってきた同人作家が商業誌デビューを果たすこともあります。

同人作家の中には、商業誌レベルの画力を持つ人や、オリジナルストーリーの展開が秀逸という同人作家も少なくありません。

コミケはこういった人材発掘の場としても注目されています。

二次創作の人気が元ネタ人気につながる

商業誌に連載されているような漫画やゲームについて、もともとはそこまでの人気がなかったけれど、同人作家が発表した二次創作作品が注目された結果、元ネタとなる作品の人気に火が付いたということも少なくありません。

これは、同人作家が元ネタとなる作品や作家をリスペクトし、キャラクターを魅力的に描いた結果ともいえます。

「もちつもたれつの関係」や「WinWin」という理由から、著作権を保有する作家が二次創作を黙認していることもあるようです。

二次創作作品が訴えられたケース

これまで、二次創作による著作権侵害は親告罪だから訴えられるケースは少ないという内容をまとめてきましたが、過去には実際に二次創作作品が著作権侵害として訴えられたケースもあります。

子供向けアニメが成人向けに二次創作されたケース

子供向けのアニメーションのキャラクターを使用し、成人向けの漫画に仕立てた二次創作作品が告訴されたケースがあります。

このケースでは、通販などの形態を利用しコミケ以外の場所でも頒布されていたことや、過激な描写なども含まれており、作品の世界観を著しく損害したという理由から告訴されたものです。

成人向けとしていても、通信販売を介して子供が購入できる可能性があったというのも、告訴に踏み切る大きな理由になったとみられます。

この事案では、著作権を侵害している旨を知らせる通告を一切行わず、刑事告訴を行った結果、その著者である同人作家が逮捕されています。

また、同人誌を印刷・製本した印刷会社も書類送検された経緯があります。

同人作家は罰金刑を受けており、同人作家に衝撃を与える事件ともなりました。

同人作品が原作作品以上に売れ、原作と誤認されたケース

原作のアナザーストーリーとして頒布された二次創作作品が、同人誌としても異例の1万部以上の売り上げがあったとされています。

このように二次創作作品が独り歩きしてしまった結果、原作と誤認されるようになったという結果があったようです。

キャラクターデザインが酷似していたことからオリジナル作品の出版社に、二次創作作品のストーリーについて問い合わせが殺到したという経緯があり、すみわけを行うためにも原作の出版社とその著作権者が告訴に踏み切ったとみられます。

この事案では和解に至りましたが、売上金の一部を原告側に支払うことや、在庫として残っている同人誌の破棄(絶版も含む)など、同人作家にとって大きな代償を支払うことになりました。

原作者が持つ世界観を著しく傷つけたケース

こちらは、学園ものの恋愛ゲームの主人公が、成人向け二次創作作品のモチーフになった例です。

原作で作り上げられた主人公のイメージが台無しになるという理由から告訴に至っています。

こちらの事案は、裁判によって同一性保持権(オリジナル作品を意に反して改変されない権利)の侵害が認められ、227万5千円の損害賠償の支払いが命じられています。

二次創作物に著作権はある?

二次創作物として頒布しているものでも「違法」とみなされないものがあります。

同人作家として活動したいけれど、法に問われるような表現はしたくないというのが本音です。

どういったラインまでが許されるのか知りたいという場合は、参考にしてください。

小説の登場人物の名前などを二次創作に利用したケース

著作物として著作権を主張するためには、著作権法第二条において「思想または感情を創作的に表現したもの」である必要があります。

したがって、著作権法によって保護されるのは、キャラクターデザインやその世界観がこれに当たると考えられます。

作品の登場人物の氏名やタイトルなどは著作権の対象外とされています。

例えば、主人公の氏名に作家の著作権が及んだ場合、実在する同姓同名の第三者と著作権侵害で係争する可能性もあります。

そのため登場人物の氏名は著作権を主張することができません。

これらを総合的に考えると、小説の二次創作は著作権侵害と認めにくいところがあります。

ラノベの二次創作はもちろん、アニメやゲームのノベライズなどはクリアできる可能性があります。

ただし、原作と近いキャラクターデザインを利用した挿絵を入れることで、二次創作と認識される可能性が高くなり、著作権侵害が認められるケースとなります。

また、同一性保持権という原作者の権利は保証されています。

ノベライズ作品でも、明らかに原作に寄りすぎている作品は、著作権侵害の可能性も考えられます。

家庭内や個人的に私的利用するケース

二次創作でも、家庭内で創作することや個人的に私的利用する場合は、著作権の侵害には当たりません。

ここでは「私的利用」という言葉をクローズアップしましょう。

二次創作作品は、友人同士や家庭の中での公開・頒布であれば「私的利用」という言葉が成立すると考えられます。

「私的」ですので、10人以下の友人同士のやり取りであれば問題ないといえるでしょう。

同人誌を作成する場合は10冊程度、同人グッズの場合も1~2個程度の製作にして自分だけで楽しむほか、友達へ渡せるという拡大解釈もあります。

「頒布」は罪にならないの?

同人誌即売会の世界では製作した同人誌を「販売」ではなく「頒布」ということが一般的となっています。

この頒布と著作権についても考えていきましょう。

頒布とは

頒布(はんぷ)とは、「配布」と同じ意味を持つ言葉です。

配布というと無料・無償というように金銭がかからないイメージがありますが、頒布の場合は、会員や仲間内といった特定の相手に有償で配布するという意味合いが強くなります。

販売と頒布は同じ意味ではないか、と思われることもあるでしょう。

販売の場合は不特定多数へ売り渡すというイメージ、頒布の場合は少数特定に売り渡すというイメージを持つと、わかりやすいのではないでしょうか。

ここでお気づきになることもあるでしょう。

先ほど記した「二次創作でも私的利用であれば違法に当たらない」という内容にリンクしてきます。

ここで納得してしまうこともありますが、コミケの世界ではまた違った意味が発生しています。

著作権法第二条では、人数や金銭の授受を問わず、著作物の複製物(ここでは二次創作作品)を譲渡することや貸与する行為を「頒布」と定義しています。このため同人誌即売会では「頒布」という言葉が多用されるのです。

本来はアウト

著作権法が示す「頒布」という言葉を使って正当化させても、二次創作自体が法律的にアウトです。

頒布に金銭の授受が絡めば、原作者の著作権だけではなく利権を脅かす行為にもつながります。

同人グッズの頒布に関しても、出版や販売ライセンスを持つ企業と競合することになるでしょう。

内容によっては「模倣品」「コピー商品」などと指摘され、著作権侵害で訴えられる可能性もあります。

少数ロットの頒布なら

「二次創作物の私的利用」といったところを主張するとどうなるでしょうか。

もちろん正当化させて主張しても著作権を侵害していることには変わりありませんが、少数ロットで制作したものの頒布にとどめていることや、商用の本家商品とは全く異なる同人グッズの制作であればグレーのままという可能性もあります。

コミケなどに持参する頒布品は、少数精鋭にとどめるなどの工夫をしてみるとよいでしょう。

「同人グッズラボ」のようなサイトでは1個からオリジナル同人グッズを作ることができます。

自分用の「痛グッズ」なら、どんなに趣味に走っても問題ありません。

二次創作はマナーを守ろう

二次創作と著作権に関することを中心にまとめました。

基本的にコミケなどで頒布する二次創作作品は著作権的にアウトですが、日本のサブカルチャーとして世界的にも知られているイベントは、様々な理由により成り立っています。

ただし、意図的に原作を脅かす二次創作作品を発表することや、商用目的に近い頒布を目指すことは、法律とコミケ文化のバランスを崩してしまうことにもつながりかねません。

二次創作で同人活動を行う場合は、マナーを守ることも大切です。