SNSの発達や、同人活動文化の発展で常に問題になるのが、「著作権」についてです。
同人活動などをしていない人でも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
その問題は、年々根深いものとなっています。
現代社会において「著作権」は決して他人事ではなく誰もが侵しかねない権利です。
その実際を把握しておくことが大切です。
目次
著作権って何のこと?
著作権が厳しく騒がれるようになった昨今において、その意味を知っておくことは極めて重要です。
その権利は創作において誰もが持つことができ、一方誰もが侵す可能性がある権利なのです。
自分の考えや想いを何らかの形で表現したものを著作物といいます。
この著作物を創り出した人を著作者と言います。
著作者が法律に準じて持つことができるのが著作権です。
著作者が生み出した作品が他人に悪用されないよう法律で保護をされることによって、文化を発展を促すことを目的にしています。
この著作権は知的財産権の一種とされています。
知的財産権とは専有権ともいわれ創り出した無体物について、その著作者など権利を持つ人間が、複製などの行為を独占できる権利の事です。
他の例でいえば、特許や商標権のことです。
特許や商標権も、とったとらない、先を越された侵害された、と近年ワイドショーを賑わせつづけています。
同じ知的財産権と言えど権利の強さには違いがあります。
例えば特許権は有用な発明を行った発明者が、発明を独占する権利を国から付与され得ることができます。
特許は出願により方式審査者や実態審査などのチェックを通らなくてはなりません。
審査するためには所定の金額も必要になります。
それだけに特許を取った場合、発明に対する国の保護力や独占性は強いです。
一方、著作権はどうかというと、その範囲が広く、基準はとても曖昧です。
著作権自体が文化の発展を目的としてその表現を保護する目的から作られているために、あらゆる創作物が対象となります。
著作権の発生基準自体も、特許のような登録が必要ではないため、著作者が創作した時点から発生することになります。
私たちが普段目にするあらゆるものが著作権の対象となっているのです。
著作権にはどんな制限がかかっているのか
著作権を所有する著作者は、自身の著作物の利用を許諾する権利を用います。
その利用法も支分権として細分化されています。
例えば複製権です。
著作物をコピーすることを許されます。
それから展事権です。
美術品等の著作物を公に展示することを承諾します。
口述権は言語による著作物を公で口述できる権利です。
翻訳権では、著作物を翻訳したり、編曲したり、映画化したりなど翻案を許される権利です。
これらの他にも様々、著作物に対する権利がかかっています。
それらの権利を承諾し使用を許可することができるのが著作者です。
著作者は許可だけでなく、著作権自体を譲渡することも可能です。
その場合著作物にかかる支分権も譲渡された人物または会社等に移ります。
著作権は、その利用を許諾できるように、拒否することももちろんできます。
本人の許諾が存在しない場合には拒否の意思を示さなくても、勝手に利用すること自体が法律で制限がかかっています。
私たちは制限の範囲内で著作物を利用しなくてはなりません。
基本的には著作物を営利目的で使うことに制限がかかります。
その著作物を使って他人が利潤を受けないよう、あくまで私的使用での複製が許されています。
しかし複製する場合デジタル機器を使う場合はそれらの機器に使用した分程度の補償金を権利者に払わなければなりません。
著作物を中心としてお金が動くことが基本的にNGの対象となります。
これらの著作権への法的な権利を見ると、著作物は法律によって徹底的に安全性を確保されているように思えますが、それは正しいとはいえません。
著作権は前述のとおり創作を行った時点で誰にでも発生します。
手元にあった紙に何の気なしに描いた落描きにも発生するという事です。
全人類が著作者であるといっても過言ではないでしょう。
しかしその中で著作権が支分化されていることや、制限がかかっていることについて明確に言える人がどれだけいるでしょうか。
そして、それらすべてを法律で管理することは非常に難しいことです。
ですから、相手に著作権を侵害されない、もしくは相手の著作権を侵害しないためにも、自身が著作権について知っておく必要性があるのです。
所有権と著作権は違う!
著作権に類似した所有権と言うものがあります。
所有権というと利用の承諾を受けたような気がしますが、それは違います。
所有権を得ることと、著作権を譲渡されることは全く別物です。
これはある事件でハッキリと示されています。
顔真卿自建中告身帖事件
この事件は唐代の書家の真蹟である顔真卿自建中告身帖を所有していた博物館が、告身帖を無断で複製して販売した出版社に対して所有権の侵害を申し出た事件です。
出版物の販売差止と廃棄を求めたこの裁判でしたが著作物はすでにパブリックドメインであるとして博物館が敗訴しました、
パブリックドメインとは権利が一般公衆に帰属していることを言います。
所有権はその著作物の物理的な権利のみで「表現」を私有できる権利ではないんです。
著作権とはそもその著作物の表現を保護し文化の発展を促す目的でできています。
ですから所有することとは全く別の概念です。
所有権を持つ所有者は、著作物そのもの(有物体)を保護する権利はりますが、複製に制限をかけたりすることはできません。
著作権が切れた場合に自動的に所有権を持っている人に移るわけでないんです。
「じゃあ、著作権の切れたものなら何でもし放題だ!」といって美術館のものを写真で撮って複製するのはNGになる可能性が高いです。
そこが撮影禁止である場合は違法にあたります。
所有者には著作権がないから撮影禁止の権限をもってないのでは、と思われる方もいるでしょうが、施設の管理を有する場合、施設管理権という権利が発生します。
所有権、著作権にかかわらず施設内でのルールは守らなくてはなりません。
守るべき権利がたくさん出てきてややこしいのですが、この記事の主題である同人活動における著作権については、さらに曖昧なものになってきます。
同人活動の発展
同人活動はかつては著名な作家や詩人が集って作った同人雑誌が日本における起源とされています。
「文学界」や「新思潮」などの文学雑誌は近代文学の発展にとって大きな役割を担いました。
そして同人活動という文化も日本で大きな発展を遂げていきました。
毎年行われるコミックマーケットは今や73万人の来場者数をカウントし世界最大の同人誌即売会として社会現象になっています。
「同人活動=日本の文化」という風潮さえあります。
同人活動は企業を通さず独自に同人の範囲内で行う創作物の販売活動になります。
そこで大きな割合を占めるのが二次創作です。
二次創作は限りなく黒に近いグレーゾーン
二次創作とはベースになる作品表現に基づいて創作行為を行うことです。
言い換えると「著作物を元にした著作物」になるわけです。
先ほど述べたように著作権とは著作物の表現を保護する目的とするものです。
著作者物を著作者以外が利用し利潤を受けるのは制限されています。
となると、作品をベースに捜索をする二次創作は制限にひっかかることになります。
それは、間違いなくそう、ではあるのですが現状、二次創作の多くは黙認されています。
規模的にも取り締まれるものではないですし製作者サイドも黙認せざる負えないというのが現状と言った感じです。
二次創作は権利を侵害するタブーを犯しています。
例えば少年漫画を元にして妄想を発展させた同人誌を売った場合には、内容を許可なく改変しており翻案権を侵害しています。
もし内容を改変しないからカッコいいシーンを写し描きした場合も複製権にひっかかってしまいます。
権利は色々なところで発生しますが、それは著作者側が訴えた場合にのみ効力を発します。
だから、ほとんどの同人活動が黙認されている現状になっているのです。
だからといって無法地帯かといわれるとそれもまた違います。
ポケモン同人誌事件
この事件は任天堂から販売されている「ポケモン」のイメージを侵害する内容を書いた同人誌の通信販売を行っていた作者が著作権法違反によって逮捕された事件です。
これは一般人からの「内容が酷い同人誌がある」という情報提供があり、警察に届けが出された経緯があります。
作者は略式起訴で罰金に科せられました。
さらには、その同人誌を印刷していた印刷会社までもが、著作権違反ほう助の容疑にかけられ書類送検されてしまったのです。
公式に同人活動が知られ大ごとになった例は、同人誌だけではありません。
『うたプリ』の同人グッズを公式が注意
「うたのプリンスさまっ」などの人気コンテンツで有名なブロッコリーが、Twitterアカウントにて同人グッズの販売を行っているユーザーで警告を行いました。
タイムライン(TL)にユーザー名を表記しグッズ配布の中止を呼びかけており、必要であれば法的措置をとることも明言しています。
警告を受けたグッズはうたプリのアイコン的キャラクターをモチーフにしたキーホルダーなどでした。
そのままをトレースしたわけでないにせよ、明らかにそのキャラクターであることは間違いがなく公式に忠告を受けても仕方ないデザインでした。
その他にもブロッコリーは衣装デザインが類似しているものやモチーフ柄のポーチなどにも忠告のツイートをしています。
デザインがどうというよりは、まず『うたプリの同人グッズと明記して、利潤を得ようとしている』ことが公式のアウトラインだったようです。
これに対し聞く耳持たずで販売する人も入れは謝罪して販売を中止する人もおり対応は様々ったようです。
このようにジャンルによっては厳しく摘発されてしまうケースもあります。
一方で、こんな例もあります。
二次創作に使用OKの作品
2例を紹介しましたが二次創作に関する事件は繰り返し起こっており、そのたび同人活動のボーダーラインについては議論が持ち上がってきました。
あらかじめ公式でも二次創作活動の扱いを明言している場合が増えました。
その中でも、二次創作に関して大らかな例をいくつか挙げます。
東方project
同人で慣例的な手段と内容の範囲内であれば、提出報告などをしなくても活動をしていいと明言しています。
ただし二次創作物のトラブルに関しての責任は負わないことも記してあります。
日丸屋秀和作品
ヘタリアで有名な作家さんです。
二次創作に関してはオリジナルキャラ作成から同人誌、ファンアートにコスプレまでOKです。
ゲーム作成も可能でかなり寛容です。
ブラックジャックによろしく
規約に違反しない限りは商用非商用に限らず二次での利用が可能です。
営利目的の活動は控えるのが吉
かなり二次創作への許容が深いところもありますが、これはほんの一面です。
多くの公式では「公認はしないかわりに不可とも言わない」といった感じである一定の距離を置いている場合が大半です。
非営利目的としない趣味の範囲では容認しているといったようなところも多いです。
これがいわゆる「黙認」です。
同人誌・グッズが限りなく黒に近いグレーゾーンなのは、公式の対応がそれぞれであることと販売がどれだけ営利目的か、趣味の範囲内で終わっているのか、などによってくるからです。
公式と本人のさじ加減と言ってもいいでしょう。
特に同人グッズは同人誌以上に風当たりが強いと言われています。
同人誌は作者の創作者が出やすく自立しやすいですが、グッズはモチーフに頼りがちでどうしても公式デザインと似通ってしまう傾向があります。
昨今ではラブライバーの画像などで話題になりましたが、痛バなどを作成し大量のグッズを身にまとう事がステータスになっている人もいます。
同人グッズのデザインが優れているとそちらにファンが傾き公式に上手くお金が回らなくなる可能性があります。
若年層では、ファン作品を買っても公式にお金が入らず作品の為にならないことがわからない場合も多いです。
その人たちをターゲットとして、海賊品のようなポジションでグッズを売っている人もいます。
そうなると、前述で例に挙げたうたプリグッズの摘発の様に公式が動かなくてはならない場合がでてくるのです。
しかし、公式運営でもそこまで手が回せることはほとんどの場合ないです。
ですから同人グッズの活動にはとくに神経質にならざる負えません。
これから同人グッズを作ろうとされる場合には、あらかじめ公式グッズの一覧などをしっかりチェックして、類似しないよう気を付ける必要があるでしょう。
同人活動は、『著作者には権利を訴え制限する力があること』を忘れずに『著作者にリスペクトを持ち利潤を目的としない良心を忘れない創作』を行うことが大前提になってくるのです。
著作権を正しく理解すること
著作権を正しく理解することは、現代社会を生きる私たちにとってとても大事です。
楽しいだけでやっていた活動が、訴訟にまで発展しかねません。
前例のパターンを知っておくことももちろんですが、一次創作元がどのような方針をとっているのかを把握しておくことも大切です。
周りもやっているからと流されてしまう前に、一度、著作権がどのように関わってくるのかを考えておくといいでしょう。