趣味が高じて同人誌を作りたくなった時、その同人誌の中身以外にも様々な事を考えなければいけません。
どのイベントに参加するのか、どの印刷会社を選ぶのか、価格はどれくらいにするのか、等々、いざ作るとなると次々に疑問が出てきます。
そして何より初参加者の頭を悩ませるのが、初めて同人誌を作る時の発行部数です。
目次
初めての同人誌!何部刷ったらいい?
結論から言ってしまえば、イベント初参加、フォロワー数が200人以下の人は、10部~20部ならば完売できる可能性があります。
少ないように感じるかもしれませんが、この数でも完売しない可能性があるのが、知名度の低い状態でのイベント参加なのです。
この数の場合、印刷所を使うと1冊あたりの単価がやや高くなるので、コピー本を作って頒布する方法もあります。
印刷所を利用せず作れるコピー本
自宅やコンビニのコピー機で印刷し、自分で製本して作る「コピー本」という同人誌の形態があるように、必ずしも本を印刷所で作ってもらう必要はありません。
コピー本の方が在庫管理の点では場所を取らない・重さも多くの場合は製本した本よりも軽い利点があります。
予想が難しい発行部数
どうしても最初から印刷所を利用したい!自力では時間や技量的に厳しい!という人は印刷所への依頼一択となります。
印刷所の料金設定を見てみると、多くの印刷所では、発刊する部数が多いほど1冊あたりの価格が下がってくる事がわかります。
単純に考えれば多く刷るほど金額面ではお得になるのですが、同人誌は確実に売れる見込みがある、売れ筋の商品ではありません。
初参加の場合は「在庫が出たらどうするのか」を考えた発行部数を考える必要が出てきます。
発行部数の目安になるポイント
発行部数を決めるポイントは複数存在しています。
初参加ならば多く刷ったとしても100部、完売を目指すならさらに少なく50部以下を大きな区切りで考えてみましょう。
そこから更に、イベントの規模や在庫の取り扱い、頼みたい印刷所のロット数を基準に、より現実的な数を詰めていくことが可能です。
参加するイベントの規模
同人イベントと一口に言っても、その規模は様々です。
もっとも知名度の高いコミケ、コミティアを大手イベントとするならば、オンリー、地方イベントといった中小規模のイベントも存在しています。
大手イベントほど人の入りは多いので冊数を増やした方が良いように感じられますが、大手イベントでは逆に人が多すぎて個人個人が埋もれてしまうので、知名度に左右されやすい面もあります。
逆に、予想以上に手に取られる事があるのが、旬ジャンルの企業主催オンリーです。
特に初回開催のオンリーならば、そのジャンルの本がどうしても欲しい人々にとって待望のイベントです。
目当ての作家とは違う、全く知らないサークルであっても、絵や作風が少し好みであるだけでも手に取って貰える事があります。
完売を目指すのか、次回に持参するのか
必ずしも完売を目指す必要はない、というのもポイントです。
先述した通り、1度に冊数を多く刷るほど1冊あたりの単価は安く済みます。
2度、3度と継続したイベント参加を考えている場合、1回のイベントで完売してしまうと、次イベントには新たに印刷を繰り返さなければなりません。
そのため、3度のイベントで完売を目指すような冊数を刷ってしまえば、持ち運びの手間こそ出て来てしまうものの、印刷発注の手間や費用は都度の発刊よりも軽くなります。
多めに刷っておく事で、会場に自分の本を目当てに来てくれた人が完売でがっかりせずにすむ、という利点もあります。
ただし次の点も懸念しておきましょう。
在庫を置くスペースが自宅にあるか
同人活動で優先すべきは、作者が無理なくその活動を続けて行けるかどうかです。
手に取ってくれる人のことを考えて完売しないよう大量に発刊したものの、たくさんの在庫で居住スペースが圧迫されるというストレスが生じてしまっては、日常生活に差し障りが出てきます。
もちろん、自宅に十分な収納スペースがある、自宅から会場まで在庫を持って行く準備や心構えがある、という場合は問題ありません。
初めての同人誌印刷、同人イベント参加で、今後参加するかどうか自分でも判らない人は、ひとまず1回だけの参加と考えて完売を目指す冊数にするのが一般的です。
自家通販は可能か
少数部数の在庫ならば、自家通販を受け付けて、自宅在庫を減らしていく方法もあります。
本の梱包方法、支払い方法、同人誌数冊に適した宅配方法など調べる点は多くありますが、個人サークル台頭によってこうした情報をまとめているサイトも少なくありません。
残り部数が100部以上あり、その全てを自家通販で捌くとなると、最大で100回分の梱包を行う事になります。
これも先ほどの「作者が無理なくその活動を続けて行けるかどうか」の点において、あまり好ましい状態ではありません。
個人サークルならば、通販を受け付けるのは残り部数が自分で無理なく捌けると判断してからにしましょう。
また、複数人で構成されたサークルならば、梱包・発送作業は分担できるのでこの限りではありません。
印刷所の印刷部数も参考に
見落としがちなのが、印刷したい本の仕様によっては最低ロット数が決まっており、10部や20部といった少数印刷が不可能であるケースです。
最近では1冊から同人誌が作れる事を売り文句とした印刷所も増えてきていますが、紙質や印刷方法に凝った場合、その発行部数が50部以上からに設定されている事もあります。
仕上がりをこだわりたいとしても、ここまで記述してきた在庫の問題を考えた時、あまり初心者向けの印刷部数ではありません。
自分の同人サークルを客観視すると?
発行部数を決めるにあたり、どれだけ手に取って貰える見込みがあるのか、という観点も重要です。
これは自分がweb上で発表してきた作品によってどれだけ「ファン」が獲得できているか、という事に通じます。
TwitterといったSNS上でRTやいいねがたくさん貰えていても、その中の何人がイベント現地に訪れることが出来るのかは、かなり予測が難しい問題です。
フォロワー数は?
良い作品がRTされる事で次の作品を期待され、作者アカウントをフォローしてくれる人が増える、その人のRTによってさらに周知されていくのがSNSの利点です。
しかし自分がTwitterを使う時のことを振り返ってみると、「この人の新作が気になる」という時は、とても気軽にフォローしていませんか。
数多くフォロワーの中にはあなたの作品を待ち望み、もし同人誌が発刊されたなら絶対に買いに行く!という熱量の好意を抱いている人がいるかもしれませんが、全員がそうであるとは限りません。
発刊部数はフォロワー数の10分の1でも多すぎる、という声もあります。
同人イベントに参加を決めた時のツイートへの反応の数など、判断材料を増やしていきましょう。
活用したいアンケート機能、ただし盲信は駄目
Twitterやpixivでは、項目を決めて閲覧者がその項目に投票できる「アンケート機能」が存在しています。
この機能を使って「紙の同人誌を出したら欲しい?」や「初心者なら何部刷った方がいい?」といった質問を作り、投票数から生の意見を参考にする事ができます。
ただし、ここでも重要なのが、フォローするのと同様に投票もまた、とても気軽に出来てしまう、乱暴な言い方をすれば無責任な意見であるという点です。
絶対に欲しい!と思って投票しても、確実にイベント参加できるかどうかは判りません。
特に「通販なら欲しい」といった選択肢を用意してしまうと、実際に自家通販をやったことが無い人が、作者に手間があるとは想像せずに投票してしまう事もあります。
SNSならではのアドバイス、ハッシュタグ
Twitterでは「ためになる同人誌印刷部数アドバイス」というハッシュタグが2013年頃から存在しています。
中には「1000部刷った時の段ボール」の在庫画像や、レポ漫画形式でどういった後悔や反省があったか載せている人もいます。
具体的な体験談が多いので、こちらも参考にしてみましょう。
ただし寄せられているツイートは、古くは7年前のものなのです。
同人界隈において日進月歩に便利になっていく印刷や宅配、委託についてはそのまま鵜呑みにせず、情報が何年のものか確認してください。
イベント別の発行部数目安
最初に述べた通り、知名度が低い状態でのイベント参加では、発行部数は10~20部が完売目安です。
ただし、イベントの種類や参加目的によっては、+10部、20部と合った方が適している事もあります。
それが、完売を目指すのではなく、頒布しつつ交流もしたい、という場合です。
元々こうした同人イベントの主目的は、ファン同士による交流の場です。
同じイベントに参加した知り合いに配る、憧れの作家に渡して交流のきっかけを作る等を考えた時、頒布数+交流で配布する分を計算した部数が理想となります。
地方イベント
地方イベントとは、個人や団体が首都圏、都心部以外で開催する同人誌即売会です。
多くの場合は創作・二次創作を問わない、創作者の交流の場として利用されます。
参加者の多くが未成年であり、成人向けの参加を禁止しているイベントもあります。
小規模ながら漫画を描く上で必要な書籍資料、文房具の販売店舗が提携して出店されることもあり、初めて同人誌を描こうとする学生にとって手助けになるイベントでもあります。
初めてサークル参加する初心者ならば、このイベントでの発行部数は5~20部、頒布よりも交流に重きを置いた冊数になります。
コミックマーケット(コミケ)
夏コミの地図をA4サイズで印刷できるよう作成したのでコミケに行かれる方是非お使い下さい#c92 #コミケ92 #コミックマーケット92 pic.twitter.com/0y1UceeASm
— Atolo (@abunoumaru07) August 9, 2017
コミケとは、言わずと知れた国内最大の同人誌即売会です。
サークル参加者は勿論、一般参加者の規模も年々更新されていきます。
サークル参加者は抽選で選ばれるので、確実に参加できるものではありません。
ただし初心者だから、マイナージャンルだから、創作だからといった点で抽選が不利になるものではありません。
機会があれば一度は参加して見たい、「同人誌」自体の幅広さについて知見を広げられる恰好の場です。
ただし、初めてサークル参加する場合、コミケの参加サークルの多さから自分のサークルは埋もれてしまいがちです。
規模の大きなイベントですが完売はあまり期待せずに、10~30部ほどにしておきましょう。
企業主催オンリーイベント
(、・ω・)、本日の艦これオンリーのサークルマップをご覧ください pic.twitter.com/kTC6GqeKUW
— かにきち∴⊂(・ω・ )にスパイス (@kani30) January 25, 2015
企業主催のオンリーイベントとは、赤ブーブー通信社やスタジオYOUといった企業が主催する、1ジャンル・1作品の参加者のみで限定された同人即売会です。
旬のジャンルが開催される事もあれば、そのジャンルで30回以上開催されている老舗オンリーもあります。
オンリーイベントでは地方イベントや大手イベントよりも「誰を」「どのように」描いている作品なのかが重視されます。
人気ジャンルで同人誌を出した場合、絵さえよければそのキャラが表紙にいるだけで買う「表紙買い」が起こり得る母数が増えます。
SNS上で自分を知っている人だけでない受け取り手が現れ、作品を通じて知ってもらえるのがオンリーの魅力の1つです。
オンリー参加での部数は30部~100部、上限は描いた作品が「旬ジャンルであるか」「需要が高い初開催のイベントであるか」を鑑みて決めてみましょう。
個人主催オンリーイベント
「このジャンルで、このテーマを描いた同人サークルだけでイベントをしたい」という場合の選択肢が、個人で小規模なオンリーイベントを開催してしまう事です。
いわゆる「プチオンリー」もこちらに含まれます。
個人主催イベントの風潮が元々あった所に、赤ブーブー通信社が「プチオンリー」というイベント形態を始めました。
スタジオYOUのオンリーコミュもまた同様に、いずれも参加者が主導して開催されるイベントです。
規模は企業主催オンリーほどではないにしろ、そのジャンル・キャラクターが好きなサークルが集まります。
30部~50部を目安に、ジャンルの規模によって+-10の増減で適正な数に近づけていきましょう。
試行錯誤で経験を!
ここまで完売する方が良い点、完売しなくても良い点などを挙げてきました。
しかし本来、最も気にしたいのは「イベントを楽しめたか」どうかです。
楽しい思い出を積み重ねて、次のイベントへの活力にしてください。